2011年10月14日金曜日

萬福寺 狸問答の記

今年も狸祭りが近づいてまいりました。
県外の人には馴染みが無いでしょうが、徳島県人なぜか狸が大好きなのです。
歌まであるんです。
徳島県民の芯まで染み込んでるあの歌が。




1,桶屋が夜中に桶作り
コトコトコトコトコトコトコト
お宮のほこらの裏じゃった
「いや、わい夕べ夜中せえへんでよ」
ほな、あれはたぬきであったんじゃ
コトコトコトコトコトコトコト
阿波の狸の話です

2,酒屋で夜明けに戸を叩く
トントントントントントントン
小雨のしょぼ降る朝じゃった
「おれが出てみたら誰もおらんのじゃ」
ほな、やっぱりまめだであったんじゃ
トントントントントントントン
阿波の狸の話です

3,そばやがお城へそば売りに
ツルツルツルツルツルツルツル
太郎が毎晩食べにきた
「あとで金を数えたらこれが木の葉じゃ」
ほな、そいつはたぬきであったんじゃ
ツルツルツルツルツルツルツル
阿波の狸の話です

4,地蔵のまわりで笑い声
キャラキャラキャラキャラキャラキャラキャラ
夜釣りの釣り人大慌て
「あとからもどってみたら魚が一匹もおらなんだ」
ほな、それはたぬきであったんじゃ
キャラキャラキャラキャラキャラキャラキャラ
阿波の狸の話です

とまあ、こんな歌詞で森田公一が作曲しております。
そうです森田公一とトップギャランの森田公一です。
(ほら古いって言っていいよ)


狸を祀った祠めぐりの冊子などが無料で配られており、オリエンテーリングが
楽しめるように(?)なっております。
下の写真の冊子が、ワタクシめは書店でもらってきました。
内容はこのように徳島市、小松島市、鳴門市などに点在する狸を祀った祠の説明と
スタンプを捺せるような欄があります。
で、ワタクシめはこのような時期に祠を巡るのはいやなので(←ひねくれもん)
このような所に行って参りました。
のらねこ師匠から教えてもらった「如王山熊野院 萬福寺」
場所はここ美馬郡貞光町大字太田
より大きな地図で 萬福寺 を表示

狸を祀った祠のあることで有名ですが、実は。
冷泉天皇の安和二年(969年)、忌部神社別当十八坊の一として創建された
由緒ある寺院です。
で、寺門右脇に「大統領為左衛門狸御参社」の碑と狸の置物。
そして凛々しいお姿の「大統領!!!為左エ門」
狸の番付などもございます。
そこで登場するのが写真の笠井新也氏著「阿波の狸の話」中公文庫でございます。
2009年初版発行ですが、著者の笠井新也氏は明治17年生まれ、
本当の初版は昭和2年なのです。
また同録されている「阿波伝説物語」は明治44年のものです。
さて、阿波の徳島は狐に化かされたと言う話は少なく、化かされるのは「狸」だと相場が決まっておりました。
県内に狸を祀る祠は600から700とも言われ、伝説についてもその大半が山間部より平野部、それも人口密集地に集中する形で残されています。
で、この中に納められた「萬福寺 狸問答の記」より一部転記致します。
著者笠井新也氏が昭和二年にここ萬福寺に調査に行った際の記録です。

ともかくもまず長江の実験から始めることにして、為左衛門を呼び出してもらう。
長江は承知して、庭へ下りて口と手を清めて座に帰り、懐から数珠を取り出して
合掌してこれを押し揉みながらしばらく祈念して、「為左衛門為左衛門」と二口
ばかり呼ぶと、長江の手はたちまちブルブルと煽動し始める。それと同時にクス
クスと鼻を鳴らしながら、顔を異様に左右に降り始める。まさしく為左衛門が乗
り移ったのである。そう思って見るからかもしれないが、長江の顔には一種の凄
みが漲っている。と不意に、
「わしは不満じゃ。わしは不満じゃ」と叫び出した。

中略

そこで著者と為左衛門との問答が始まる。
私はまず国見鹿八の来るのが遅いので、今どこでどうしているか見てきてくれと
注文した。すると長江の合掌した手の煽動や、顔の横振りがはたと止んだ。為左
衛門が長江の身体を離れて、国見の家に向かったことが想像される。四、五分も
経ったかと思われるころ,
長江はまた手をブルブルさせ、鼻をクスクスいわせ始めた。為左衛門が帰って来
たのである。彼は復命していう。鹿八は今着物を着かえて外へ出たところだから、
おっつけここへ来ると。そこへ寺の娘が帰って来ていうには、鹿八さんは火鉢の
前に座って煙草を喫んでいたが、私が行って皆さんがお待ちだから早く来てくだ
さいというと、着物を着かえるのが面倒臭いから、今までグズグズしていたのだ
が、それでは今着物を着かえたらすぐ行くと云ったとの事。

以下略

と降霊の実験記録を読んでるような、普通の狸の民話と一線を画すような内容。
この後笠井氏の実家の様子を見てくるとか、カメラマンの国見氏の母親の病状
を診るとかの実験(?)が行なわれます。

まあ、そんなところで萬福寺まで行ってみた訳なんですが、当然そんな面白す
ぎる出来事があるはずもなく祠を拝んで帰ってまいりました。
で、祠の写真なんですが、見事なピンぼけなんで出しません。
(多分、出すなってことなんでしょう)


後ろ姿もまた凛々しい「大統領!!!為左エ門」でございました。

ちなみに、笠井新也氏著「阿波の狸の話」Amazonで注文しようとしても
なぜか在庫切れになってるかもしれませんぜ。(もう入ってるか)
ねえ、関係者諸氏。


2 件のコメント:

  1. この長江のおっさんの住所地名が出てますが、うちの近所なんです。
    この辺、長江姓は多いですし、同級生にもいます。
    おっさんの親戚かもしれません。

    歌の歌詞は初めて全部見ましたが、よくできてますね。
    私が聞いた、たぬきの話が連想される感じがします。

    たとえば、実家が古家のころ、夜は雨戸を閉めて寝ていましたが、夜中にトントントンとその雨戸を叩く音がする。
    まだ幼かった私の母が「おとろしけん、母ちゃん見てきて」と祖母を起こし、見にかせると、前の家の親父が立っていて、「○○はんの家へはどうやって行ったらええんで?」と訊いてくる。

    すぐ近所で知っているはずなのに変なことを訊くもんだと思いながらも教えてやって、翌朝その親父に「ゆうべはどしたんえ?」と訊くと、「はあ?わしやしんなんしらん」と言われたというような話はいっぱいあります。

    返信削除
  2. to のらねこ さん
    >この長江のおっさんの住所地名が出てますが、うちの近所なんです。
    >この辺、長江姓は多いですし、同級生にもいます。
    >おっさんの親戚かもしれません。
    そんなとこにリアリティ(?)をすっごく感じます。
    ちょっと昔の(笑)徳島県人は狸とともに住んでるのがあたりまえだったんですね、改めて感心します。
    で、最近でもバカされた話がいっぱいあるんでしょ?
    「阿波の狸の話」を読んでても、ふつ〜に狸を使ったり、話をしたりしてるのが奇妙です、狸ってなんなんでしょうね。

    返信削除