2017年10月8日日曜日

麻植の系譜:願勝寺編(1)

麻植の系譜(1)
麻植の系譜(2)
麻植の系譜(3)
麻植の系譜(4)
麻植の系譜(5)
麻植の系譜(追記)
に続きます。

願勝寺(真言宗)
徳島県美馬市美馬町願勝寺8

平安時代、崇徳上皇に仕えた阿波内侍が上皇の菩堤を弔うため都に建てた願勝寺を、母の生国の阿波の維摩寺(奈良時代建立)に移し願勝寺となる。その後、歴代守護や藩主の庇護を受け郡内を代表する寺院となる。国登録有形文化財である八脚門(明治時代)、天竜寺と同一手法の滝組の県指定名勝「願勝寺庭園」(室町時代)、県内最古の博物館「美馬郷土博物館」がある。 wikipedia

【略縁起】
歴史は古く奈良時代にさかのぼり,はじめ維摩寺、のち福明寺と称し、平安時代の後期、保元の乱の後、崇徳上皇皇紀阿波内侍の願により願勝寺と改める。守護小笠原長房の祈願所、細川氏の祈願寺など歴代国主の尊崇をうけ蜂須賀氏入国の節には方八町御免池、郡中出家取締となる。十六代住職真上人は南朝方に味方して暗殺され、二十五代快上人は阿波の法茸騒動の時反対運動の先頭に立ち、三千人の山伏を動員してその野望を押え、幕末には四十四代美馬君田が勤皇の志士として活躍し、その功により正五位を贈られるなど積極的にその時代に生きた住職もあり、現住職で四十九代目になる。
本堂北側の庭園は池泉式枯山水の庭園で滝石の石組が注目され薄い板状の青石を水落とし石とした石滝は、天竜寺庭園とよく似ているといわれ、徳島県の名勝に指定されている。県指定の文化財としては、聖来迎図があり、又、境内には美馬郷土博物館があり、国指定の段の塚穴、同じく指定の郡里廃寺後の出土品等多数展示してある。
新四国曼荼羅霊場 HPより



 寺前の略寺史にはご覧のように
「當寺は忌部五十麿の草創にして
 阿波八門首の一寺なり。」
との記載があります。
奈良時代に、いわゆる忌部氏の一人「忌部五十麿」が創起したということは、上記の説明からもわかると思いますし、
麻植の系譜(追記)
でも書かせていただいた、崇徳上皇皇妃「阿波内侍(あわのないし)」由縁の寺であることも知られております。
では、「忌部五十麿」とは誰で、何故「願勝寺」を建立したか、などなど阿波で忌部氏を知る者としては気になってくるではありませんか。
(え、気にならない?まあ、それはそれで良しとしませんか(笑))

そうこうして(どう?)調べておりますうちに、見つけてしまったのが

と、こうゆーものであるわけなんですが、そのうちの一文書に

「願勝寺歴代系譜」なる一文を見つけてしまいましたので、以降数回にわたって僭越ながら説明などさせていただこうとの御趣向で進めさせていただきます(笑)。
まずは「開起」より

    
 願勝寺歷代系譜

初代福明律師
 当院ノ開起ニシテ俗姓阿波忌部ノ正統忌部玉垣ノ宿
禰ノ庶弟也幼名ハ忌部五十麿ト云へリ共父岩木宿禰菩
提ノ為上京シテ元興寺福亮法師ノ弟子トナリ出家得道
シテ名ヲ福明ト改メ法相宗ノ学匠トナッテ斉明天皇ノ
四年ニハ維摩会ノ大講師ト仰カレ則斉明天皇ノ戒師タ
レハ都鄙共徳ヲ称ス天智天皇ノ朝阿波忌部大祭主玉満
宿禰都ナル叔父福明律師ノ為ニ阿波上郡ニテ一寺ヲ建
立シ福明律師ヲ開基トシ共名ヲ維摩寺ト号シテ維摩会
ヲ修セシメ現当二世ノ洪福ヲ祈リシトコロニ朱鳥元年
三月十日律師遷化シヨテ律師ノ名ヲ後代ニ伝エン為
メ維摩寺ヲ改メテ福明寺ト号ス是阿州寺院ノ権輿也

さて
で説明いたしました「麻植氏系譜」を思い出していただきたい。

三十一代「玉垣宿称」
玉垣宿祢    忌部社ニ八重ノ玉垣ヲツクル故ニ伊年部玉垣ノ宿称ト云錦冠赤
        衣ヲ賜リ忌部氏人ノ長大祭主トナル又時忌部旧領ヲ復スル事ヲ得タリ
とある「玉垣宿称」の庶弟、おそらくは義理の弟ではないかと思われます。
この幼名「忌部五十麿」が奈良の元興寺福亮法師の弟子となり、名を「福明」と改め、斉明天皇の戒師となった。
その後、朱鳥元年(686年)律師が亡くなったため、その名を残すために維摩寺を改めて福明寺としたのが開基であります。

(注)
維摩会(ゆいまえ):維摩経を講ずる法会。特に,興福寺で10月10日から16日までの7日間行われた勅願の法会。藤原鎌足が山科陶原(すえはら)の邸を寺として講じたのに始まるといわれる。南都三会の一つ。
元興寺(がんごうじ):奈良市にある、南都七大寺の1つに数えられる寺院。蘇我馬子が飛鳥に建立した、日本最古の本格的仏教寺院である法興寺がその前身である。法興寺は平城京遷都に伴って飛鳥から新都へ移転し、元興寺となった。

さて、忌部大祭主直系の弟が奈良の元興寺で修行し、斉明天皇の戒師となった・・・
などという話は、ワタクシも全く見たことも聞いたこともございませんでした。
無論、疑うも良し、偽書だと断ずるも良し、ですが二つの文書に同名が現れ、後述いたしますが複雑に関係し合うのを見れば単純にでっち上げだ、偽物だと言い切れないと感ずるのは私だけでしょうか。(だったりして(笑))

では数回にわたってお付き合いを願いましょう。
続く

そーれ、ヤバイよヤバイよ(笑)

0 件のコメント:

コメントを投稿